2017年11月30日
現在イギリスでは、町づくり、コミュニティにおける問題の解決を市民の力で行っていこうという地域貢献のあり方が積極的に模索されている。その中でもCharles Landry氏などを中心に提唱されている「創造的な町づくり」の方法として、芸術をツールに使いながらhuman capitalとしての市民の力とアーティストの力をタイアップさせるさまざまな試みが展開されている。 今回は、そのようなアート・イニシアティブのあり方を模索するためにダンスを使った関係性の構築に取り組むCecilia Macfarlane氏をお招きして、community danceの意味をワークショップとその後のディスカッションを通して体感した。参加者は学生のみならず、福祉施設で働く人々、アーティスト、親子、そして社会的自立を目指す人々などさまざまであった。 Oxford Youth Danceを立ち上げ、振り付け家としても活躍するマクファーレン氏は、世界各国でコミュニティダンスの講演とワークショップを開催している。日本にもすでに9回来ているマクファーレン氏が強調することは、「違い」をそのまま受け入れること、模倣するのではなく、自分の内面から湧き出てくることを重視すること、それを他者との協力へとつなげることである。ワークショップの中では自分を「開く」ことと「閉じる」ことを交互に行いながら、自分を他者に開いていく身体と見出していった。その後はペアになり、グループになることで、自らの動きを他者と合わせながら、ダンスによるコミュニケーションを導き出していく。 同時にマクファーレン氏は肉体としての身体にも私たちの注意を向けていった。身体の中心を意識し、背骨の柔軟さを意識する。その中で閉じる、開ける身体を今度はメカニズムとして理解し、実現していく方法である。 このふたつを通して、ディスカッションではさまざまな議論が展開された。高齢化社会の中で芸術の意味は何か。同時に異世代間で表現を共有する意義はどういうことか、またその効果的な方法は何か。芸術という表現法は時に非常に強い影響力をもたらすが、安全なコミュニティ構築を行うためにはどうすればよいか。文化的な違いから同じ芸術でも学びあえることはあるか、日本人の身体とコミュニケーションの特徴など、質問とディスカッションのテーマの提供はあとをたたなかった。 今回はワークショップのあとで、行ったことの意味と意義の説明をマクファーレンしが行い、それをもとにディスカッションを行った。この順序は参加者にとって、コミュニティダンスの意味をあらかじめ体感した上で疑問を導き出すという意味で効果的であったと思われる。 今後もこのようなアート・ワークショップとディスカッションを定期的に行ってほしいとの希望が多数の参加者から寄せられた。ぜひとも実行したい。