法学部では広範な知識の獲得や教養の育成を目的として、外国語科目、人文科学科目、自然科学科目など多くの科目を設置しています。とはいえ、知識や教養も体系的構築があってはじめて総合的視野の形成に至ることは言うまでもありません。例えば「地域文化論」がIからIVまであるといった具合に、知識を積み上げながら
体系的に学習できるシステムになっています。
さらに、3・4年次用に「 人文科学研究会」「 自然科学研究会」 を設置し、1・2年次で学習してきた人文科学や自然科学の領域を継続して深められるようにしています。そして、4年間体系的に学習してきた領域について一定の成果をおさめた場合「副専攻」として認定し、卒業時に「法学部副専攻認定証」を授与します。詳細は塾生サイト内の『法学部「副専攻認定制度」について』をご覧ください。
副専攻認定制度では、既存の学問分野にとらわれない「知」のフィールドを新たに開拓することも奨励しています。上に挙げたモデルにとらわれる必要はなく、例えば人文科学と自然科学の2つの研究会を履修して、人文・自然の両分野にまたがる論文を書くことも可能です。
今年度開講の人文科学研究会・自然科学研究会の一覧や、過去の優秀な卒業制作等はこちら。
◎アメリカの音楽文化 ◎世界の宗教と社会 ◎日仏交流 ◎アラブの声:メディアを通じて ◎アメリカの文化と社会 ◎イベリア半島の文化と社会 ◎日本の思想と文化 ◎小説を読む、書く ◎ことばの分析̶発見の喜びを求めて ◎ロシアの文化と社会 ◎現代ドイツ研究 ◎パフォーミング・アーツ研究 ―アメリカ文化を中心に― ◎イギリス文化・社会とメディア ◎Société française ◎世界の文学を読む ◎近現代イギリスの文化と社会 ◎ラテンアメリカの文化と社会 ◎中国及び東アジアの安全保障 ◎短編文学作品からイギリスの今を知る ◎人文・社会科学と自然科学の架け橋―環境史を学ぶ ◎生命科学にかかわる諸問題 ◎流れの物理
歴史研究は人間同士にまつわるさまざまな関係を描いてきましたが、テクノロジーの進歩により、今や人間とAIの関係も取り沙汰され、それを解釈し理解する新しい学問の登場が待たれています。そうした大きな時代の流れの中で、いま一度、人類に生存と文明を育む環境を提供してくれた自然との関係を捉えてみる必要性がますます重要になってきたといえましょう。
文明の誕生と環境、国際社会におけるパワー・バランスの不均衡と環境、災害や資源開発などに関する自然と人間社会の葛藤について、分野横断的な手法を通して学びます。また、中国をはじめ東アジアにおける研究動向を把握し、「人間と自然との相互関係」を捉える環境史のアプローチを取り込み、新たな分野の開拓や「知」の創造を期待します。この研究会は、受講者がそれぞれの専門である法律学や政治学の知識を生かして貢献し、互いに刺激し合うことのできる場となることを願っています。
宗教というと、何やら怪しい、危ないと思うかもしれません。確かに、宗教が原因で人間関係を破綻させる人もいるでしょうし、社会的混乱や戦争の一因ともなってきたのが宗教です。他方、宗教が人の心に安寧をもたらし、豊かな文化、思想、芸術の源泉となり、社会の安定に寄与してきた面もあります。いずれにしても、人について、文化や社会について考える際に、宗教は非常に重要といえるでしょう。 大学で宗教について学ぶ目的は、宗教の良い面、悪い面を列挙して擁護、糾弾することにあるのではなく、各地域、各時代の文化や社会、法律や政治などに、宗教がいかなる影響を及ぼしてきたかを分析的に捉えることにあります。当人文科学研究会では、十字軍や比叡山焼き討ち、米国の宗教右派やフランスのライシテ、葬儀・墓地の多様化や脳死・安楽死の問題、巡礼やハロウィンや妖怪アニメの流行など、宗教にまつわる様々な問題、現象を取り上げ、分析していきます。
本研究会は、パフォーミング・アーツを研究対象とします。戯曲に限らず映画、ダンス、ミュージカル、テレビ、動画配信サービス(ネトフリ、アマプラ等)、ディズニーなども射程に、こうした表象芸術が、いかに同時代の政治経済、国家国民、思想宗教の影響を意識的/無意識的に受けながら形成されているかを検討し、作品やジャンルに反映された人と社会を浮き彫りにします。
その際には多様なアプローチ方法があります。たとえば人種、ジェンダー・セクシュアリティ、階級、地域性、外国との比較や日本での受容の視点から考えたり、さらには、スポーツやテーマパーク、裁判などを広義のパフォーマンスとしてとらえ研究対象にすることもできるでしょう。わたし自身は初期アメリカ演劇を専門としていますが、ゼミ生が行う個々の研究を通して、さまざまなパフォーマンス・シーンについて一緒に学びたいと思っています。
当研究会では、「アメリカの文化と社会」の分野で副専攻を認定します。また演劇学や創作、さらにほかの国のパフォーマンス(ウィーンやフレンチ・ミュージカル、日本演劇、四季や東宝・宝塚、ハリウッド以外の映画など)に関する研究のようなアメリカに限定しないテーマに関しては、「芸術の批評と創作」の分野で副専攻を認定します。
私が担当する副専攻の「人文科学研究会」には、ラテンアメリカの文化や社会の織りなす豊かさや多様性に魅せられた面々が集い、文献研究という机上の学びはもちろんのこと、時には教室を離れ、日本社会に根付くラテンアメリカ文化の実態を知るフィールドワークに出かけています。副専攻では、特定の国や地域の研究が1年生時から体系的に履修できるようになっていますが、スペイン語・ポルトガル語圏の社会や文化を扱うコースでは、知的好奇心とバイタリティあふれる面々が、自身の学問的関心に応じて三人の先生の「人文科学研究会」の授業を横断し、学びの場を自由に共有しています。これは、異文化の混淆が織りなすスペイン語・ポルトガル語圏を扱う副専攻の授業が数多くそろう慶應義塾大学法学部ならではの学びの魅力です。
2015年の私の「人文科学研究会」では、日本製品のラテンアメリカ市場進出をテーマに、異文化受容のメカニズムとその戦略、日本とラテンアメリカをつなぐNGO活動について学びました。それがきっかけとなり、11月の三田祭ではラテンアメリカ発の美味しい恩恵―チョコレート・キヌア・コーヒーを使った商品を販売し、全収益をグアテマラの子供たちへの教育支援をおこなうNGO団体「青い空の会」に寄付しました。
ラテンアメリカを知る、体験する、考えることで得られた豊かな学びを副専攻論文という新たな実りへと昇華させるべく、学生諸君はただいま奮闘中。柔軟な発想と大胆な行動力を持ち合わせる彼らのおかげで、私もまた、ラテンアメリカを知る・学ぶ喜びをかみしめています。
ブルース、カントリー、ジャズ、ロックンロール、ヒップホップ――私の人文科学研究会では、アメリカで誕生したポピュラー音楽を〈学術的〉な対象として研究しています。ロックンロールの誕生に音楽産業の変遷はどのように影響しているのか。ブルースやカントリー・ミュージックはアメリカ南部史にどのように位置づけられるのか。ヒップホップという音楽ジャンルは既存の著作権制度とどのような関係にあるのか――こうした問いを発することで、日常的に接しているポップ・ミュージックをひとつの〈文化現象〉としてみることができるのです。
本研究会では英語圏ですでに定着している「ポピュラー音楽研究」の学術論文を講読することで、アメリカ文化への理解を深めます。それはまた、学生たちが普段から使用している趣味(好き/嫌い)や価値判断(かっこ良い/かっこ悪い)にもとづく言葉とは別の、ある批評的距離をともなう分析対象として〈音楽〉を捉えることを意味します。最終的に4年生には各自設定した主題を掘り下げた論文を、3年生を中心に三田祭で配布する音楽同人誌を作成してもらいますが、ポピュラー音楽の分析を通じてアメリカの社会や歴史を考察すると同時に、〈文化〉と〈言葉〉をめぐる根源的な問いへと議論を進めたいと考えています。
身の回りの科学現象に関する研究や勉強を実施する少人数のゼミ形式の授業です。普段なぜだろうと思ったことや気になった科学現象を、解き明かしましょう。問いの設定から解決に至る自然科学の実証プロセス(調査方法・数理科学的な論理的思考法・論文執筆や発表の技法)を学びます。担当者の専門は空気や水などの流れの物理学です。野球などのボールの変化、洗面台の水抜きといった身近な流れ現象から、雲の形成、大気、海洋、温暖化などの気象現象、宇宙まで関連しますが、身の回りの科学現象であれば、テーマは問いません。
春学期は、解き明かしたい科学現象を設定し、教科書や文献を講読することで、研究対象に関する基礎的な知識を習得・整理し、報告・討論を行うことで、それらの知見を共有します。秋学期は本格的な研究を実施し、その結果を報告・討論して、各自もしくはグループで最終的にレポート(論文)を提出します。文系の感性でブレークスルーを起こしましょう。