学部案内PDF

副専攻

法学部では広範な知識の獲得や教養の育成を目的として、外国語科目、人文科学科目、自然科学科目など多くの科目を設置しています。とはいえ、知識や教養も体系的構築があってはじめて総合的視野の形成に至ることは言うまでもありません。例えば「地域文化論」がIからIVまであるといった具合に、知識を積み上げながら体系的に学習できるシステムになっています。さらに、3・4年次用に「人文科学研究会」「自然科学研究会」を設置し、1・2年次で学習してきた人文科学や自然科学の領域を継続して深められるようにしています。そして、4年間体系的に学習してきた領域について一定の成果をおさめた場合「副専攻」として認定し、卒業時に「法学部副専攻認定証」を授与します。詳細は塾生HP内の『法学部「副専攻認定制度」について』をご覧ください。
今年度開講の人文科学研究会・自然科学研究会の一覧や、過去の優秀な卒業制作等はこちら

2023年度開講される副専攻のテーマ例(人文/自然科学研究会)

「アメリカ文化論」「世界の宗教と社会」「日仏交流」「メディアから読み取れるアラブ世界」「イベリア半島の文化と社会」「詩を読み、詩を書く」「日本の思想と文化」「小説を読む、書く」「ことばの分析」「ロシアの文化と社会」「21世紀の映画研究」「現代ドイツ研究」「中国及び東アジアの安全保障」「文学からイギリスの課題を知る」「自然科学と人文科学の架け橋―環境史を学ぶ」「流れの物理」「生命科学にかかわる諸問題」

「副専攻」認定の一例:生物学

1・2年次

実験科目(必修):生物学Ⅰ・Ⅱ(各半期3単位、合計6単位)。
自然科学科目:心理学Ⅰ・Ⅱ(各半期2単位、合計4単位)、自然科学総合講座Ⅰ(半期2単位)、他

3・4年次

自然科学研究会Ⅲ・Ⅳ[生物学](各半期2単位、合計4単位)、他+卒業研究 → 合計16単位以上

副専攻認定制度では、既存の学問分野にとらわれない「知」のフィールドを新たに開拓することも奨励しています。上に挙げたモデルにとらわれる必要はなく、例えば人文科学と自然科学の2つの研究会を履修して、人文・自然の両分野にまたがる論文を書くことも可能です。

人文科学研究会

世界の宗教と社会



大久保教宏(おおくぼ のりひろ) 先生

宗教というと、何やら怪しい、危ないと思うかもしれません。確かに、宗教が原因で人間関係を破綻させる人もいるでしょうし、社会的混乱や戦争の一因ともなってきたのが宗教です。他方、宗教が人の心に安寧をもたらし、豊かな文化、思想、芸術の源泉となり、社会の安定に寄与してきた面もあります。いずれにしても、人について、文化や社会について考える際に、宗教は非常に重要といえるでしょう。
大学で宗教について学ぶ目的は、宗教の良い面、悪い面を列挙して擁護、糾弾することにあるのではなく、各地域、各時代の文化や社会、法律や政治などに、宗教がいかなる影響を及ぼしてきたかを分析的に捉えることにあります。当人文科学研究会では、十字軍や比叡山焼き討ち、米国の宗教右派やフランスのライシテ、葬儀・墓地の多様化や脳死・安楽死の問題、巡礼やハロウィンや妖怪アニメの流行など、宗教にまつわる様々な問題、現象を取り上げ、分析していきます。

ただいま研究中!

政治学科 Yさん

世界中の友人たちとの交流のなかで、異文化理解のためには、その根本にある宗教について知る必要があると感じていました。1,2年次、日吉では東アジア宗教文化概論という授業を履修し、文化のみならず国家の形成にまで影響を及ぼす宗教の重要性について学びました。3,4年次、三田では国際政治の研究会に所属するとともに、宗教に関してもさらに深く学びたいと考え、大久保先生の人文科学研究会を履修し、副専攻取得をめざすことにしました。授業では文献を講読しながら、宗教に関する知識や分析方法を身につけていきます。また、各自の問題意識にもとづいた研究発表を行います。私は日本人の死生観について関心があり、議論を通して理解を深めています。

パフォーミングアーツ研究 -アメリカ文化を中心にー



常山菜穂子(つねやま なほこ)先生

本研究会では、植民地時代から21世紀までのアメリカの社会と文化をパフォーミング・アーツ(表象芸術)の視点から考察します。戯曲テクストに限らずダンスのような身体表現やブロードウェイ・ミュージカル、ハリウッド映画、テレビ、ディズニーなども射程に、これらの表象芸術が、いかに同時代の政治経済、国家国民、思想宗教の影響を意識的/無意識的に受けながら形成されているかを検討し、作品に反映された「アメリカ」の姿を浮き彫りにしていきます。
その際には多様なアプローチ方法があります。たとえば、人種、ジェンダー・セクシュアリティ、階級、地域性、外国との比較や日本での受容の視点から考えたり、さらには、スポーツやテーマパーク、裁判などを広義のパフォーマンスとしてとらえ研究対象にすることもできるでしょう。
ゼミ生が2年をかけて行う個々の研究を通して、わたし自身もさまざまなパフォーマンス・シーンについて一緒に学びたいと思っています。

当研究会では「アメリカの文化と社会」の分野で副専攻を認定します。さらに、アメリカにおけるパフォーミング・アーツ研究の基礎を踏まえた上で、演劇学や映像学、ほかの国のパフォーマンス(ウィーンやフレンチ・ミュージカル、劇団四季や東宝宝塚、ハリウッド以外の映画など)に関する研究のようなアメリカに限定しないテーマに関しては「芸術の批評と創作」の分野で副専攻を認定します。

アメリカの文化と社会

奥田暁代(おくだ あきよ)先生

奥田暁代(おくだ あきよ)先生

おもに人種とエスニシティに関わる問題を取りあげながら、アメリカという国家のあり方について考察しています。差別や暴力など研究会で扱うテーマは深刻ですが、論文は学生各自が決めたトピックで執筆するので、メガチャーチやディズニー映画、LGBT 友愛会についてなど、さまざまです。副専攻では興味を持った領域を体系的に学べるばかりでなく、政治や法律の知識を活かしながら横断的に考えることもできます。大統領選挙の2016年は、アメリカの政治をマイノリティの視点から追いました。

<学生から>
●少人数でアットホームな雰囲気がこの研究会の一番の特色です。先生と学生の距離が近く、どんな小さな気づきや疑問でも共有できます。加えて、学生のバックグラウンドも多様なため、より多角的な考察をすることができます。学生の本分である学びを手に入れることができる有意義な場です。(4年)
●普段の研究会では、人種問題やアメリカ大統領選挙といった時事問題に限らず、映画・ミュージカル等を素材に、アメリカ社会が抱えている問題を読み解けるのは、人文科学研究会ならではの魅力です。(4年)
●前期は文献を読みながら発表・ディスカッションを通して学びを深め、夏には合宿を行い、映画を観たりして親睦を深めました。後期は各ゼミ生が興味のあるテーマを選び、論文執筆に取り組みます。論文を書く際も、ゼミ全体で意見を交換するため、新たな発見があります。(3年)

ラテンアメリカ研究

本谷裕子(ほんや・ゆうこ)先生

本谷裕子(ほんや・ゆうこ)先生

私が担当する副専攻の「人文科学研究会」には、ラテンアメリカの文化や社会の織りなす豊かさや多様性に魅せられた面々が集い、文献研究という机上の学びはもちろんのこと、時には教室を離れ、日本社会に根付くラテンアメリカ文化の実態を知るフィールドワークに出かけています。副専攻では、特定の国や地域の研究が1年生時から体系的に履修できるようになっていますが、スペイン語・ポルトガル語圏の社会や文化を扱うコースでは、知的好奇心とバイタリティあふれる面々が、自身の学問的関心に応じて三人の先生の「人文科学研究会」の授業を横断し、学びの場を自由に共有しています。これは、異文化の混淆が織りなすスペイン語・ポルトガル語圏を扱う副専攻の授業が数多くそろう慶應義塾大学法学部ならではの学びの魅力です。
2015年の私の「人文科学研究会」では、日本製品のラテンアメリカ市場進出をテーマに、異文化受容のメカニズムとその戦略、日本とラテンアメリカをつなぐNGO活動について学びました。それがきっかけとなり、11月の三田祭ではラテンアメリカ発の美味しい恩恵―チョコレート・キヌア・コーヒーを使った商品を販売し、全収益をグアテマラの子供たちへの教育支援をおこなうNGO団体「青い空の会」に寄付しました。
ラテンアメリカを知る、体験する、考えることで得られた豊かな学びを副専攻論文という新たな実りへと昇華させるべく、学生諸君はただいま奮闘中。柔軟な発想と大胆な行動力を持ち合わせる彼らのおかげで、私もまた、ラテンアメリカを知る・学ぶ喜びをかみしめています。

文化現象としての音楽―アメリカのポピュラー音楽研究

大和田俊之 (おおわだ・としゆき)先生

大和田俊之 (おおわだ・としゆき)先生

ブルース、カントリー、ジャズ、ロックンロール、ヒップホップ――私の人文科学研究会では、アメリカで誕生したポピュラー音楽を〈学術的〉な対象として研究しています。ロックンロールの誕生に音楽産業の変遷はどのように影響しているのか。ブルースやカントリー・ミュージックはアメリカ南部史にどのように位置づけられるのか。ヒップホップという音楽ジャンルは既存の著作権制度とどのような関係にあるのか――こうした問いを発することで、日常的に接しているポップ・ミュージックをひとつの〈文化現象〉としてみることができるのです。
本研究会では英語圏ですでに定着している「ポピュラー音楽研究」の学術論文を講読することで、アメリカ文化への理解を深めます。それはまた、学生たちが普段から使用している趣味(好き/嫌い)や価値判断(かっこ良い/かっこ悪い)にもとづく言葉とは別の、ある批評的距離をともなう分析対象として〈音楽〉を捉えることを意味します。最終的に4年生には各自設定した主題を掘り下げた論文を、3年生を中心に三田祭で配布する音楽同人誌を作成してもらいますが、ポピュラー音楽の分析を通じてアメリカの社会や歴史を考察すると同時に、〈文化〉と〈言葉〉をめぐる根源的な問いへと議論を進めたいと考えています。

〈映画史〉とは何か?―イギリス映画から世界へ

佐藤元状(さとう・もとのり)先生

佐藤元状(さとう・もとのり)先生

私の人文科学研究会では、イギリス映画の視聴と議論を切り口として、〈映画史〉とは何かという哲学的な問いを考察します。映画という視覚的・聴覚的なメディアを通じて、私たちは、ある特定の国や地域の文化を、学問的な知識としてだけではなく、人びとの感情と身体的な感覚を伴った、総合的な人間の経験として、理解することができます。だとすれば、私たちの映画の関心を、ある特定の時代と地域から解放し、古今東西へと広げていくことは、私たちを文字通り世界に開いていくことになるでしょう。
本研究会では、3年生と4年生を区別することなく、1年間一緒に授業を行います。春学期は、古今東西のさまざまな映画を見て、映画史への理解を深めるとともに、映画研究の基礎文献を輪読し、映画を論じるための方法論を学習します。秋学期は、各自のテーマを研究論文に仕上げることを目標に、プレゼンテーションを繰り返し、徹底的に議論を行います。それらのフィードバックを基に、研究論文の作成に取りかかりますが、その際にもグループ検討や添削の指導を行います。
グローバル化の時代にふさわしいグローバルな知識と関心を養い、各自の関心を研究論文にまで高めていきましょう。