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マイケル・サンデル教授(ハーバード大学)特別講義

2012年5月29日(火)にマイケル・サンデル(Michael Sandel)ハーバード大学教授が来塾され、三田キャンパス北館ホールにおいて、法学部政治学科の塾生を主たる対象としたThe Moral Limits of Marketsと題する特別講義が開催されました。

c5ts2619.jpg サンデル教授はその著書『リベラリズムと正義の限界』(1982)において、当時アメリカの政治哲学界で全盛を極めていたジョン・ロールズの『正義論』を批判し、いわゆるリベラル・コミュニタリアン論争の火付け役となった世界的に高名な政治哲学者です。しかし専門の政治哲学分野を超えてサンデル教授の名を世間一般に知らしめることになったのは、日本でもNHKで放送された『ハーバード白熱教室』(Justice with Michael Sandel)でしょう。ハーバード大学の授業がメディアに公開されたのはこのサンデル教授の講義が最初です。講義では例題や実例を提示しつつ、学生に難題を投げかけ議論を引き出し、自身の理論を展開するというスタイルが用いられていましたが、今回の慶應義塾大学での講義も同様のスタイルで行われました。

c5ts2687.jpg 今回の特別講義は早川書房から翻訳が刊行されたばかりの書物『それをお金で買いますか――市場主義の限界』に添った内容のものでした。堤林剣教授の司会のもと、萩原能久教授のイントロダクションに続いて登壇したサンデル教授は「ボーイフレンドやガールフレンドからプレゼントをもらう方が現金をもらうよりなぜ嬉しいのか」、「子どもが読書をするたびにご褒美としてお金をあげることはよいことだろうか」、「売血という行為をどのように評価するか」、「電車にシルバーシートを設置することはよいことだろうか」、「経済破綻した市が命名権を売りに出して経済再建をしようとすることの是非」といった例題を次々に塾生に投げかけ、参加者全員で一緒に考えるという形式での白熱した1時間半の講義は盛会のうちに終了しました。

c5ts2722.jpg 講義はすべて英語で行われましたが、今回の特別講義を提供いただいた早川書房の方からも「慶應義塾の学生の方の英語力とディベート力により、非常に質の高い講義となり、サンデル氏も大変楽しそうでした」との言葉をいただいております。

(撮影:井上 悟)