副専攻

法学部では広範な知識の獲得や教養の育成を目的として、外国語科目、人文科学科目、自然科学科目など多くの科目を設置しています。とはいえ、知識や教養も体系的構築があってはじめて総合的視野の形成に至ることは言うまでもありません。例えば「地域文化論」がIからIVまであるといった具合に、知識を積み上げながら体系的に学習できるシステムになっています。さらに、3・4年次用に「人文科学研究会」「自然科学研究会」を設置し、1・2年次で学習してきた人文科学や自然科学の領域を継続して深められるようにしています。そして、4年間体系的に学習してきた領域について一定の成果をおさめた場合「副専攻」として認定し、卒業時に「法学部副専攻認定証」を授与します。

2016年度開講された副専攻のプログラム例(研究会)

「イベリア半島の文化と社会」「ラテンアメリカの文化と社会」「フランスの文化と社会」「イギリスの文化と社会」「アメリカの文化と社会」「ドイツの文化と社会」「ロシアの文化と社会」「中国の文化と社会」「東アジアの文化と社会」「日本の思想と文化」「ヨーロッパの文化と芸術」「芸術の批評と創作」「言語学」「物理学」「生物学」等です。

人文科学「副専攻」認定の一例:アメリカの文化と社会

1・2年次
地域文化論[アメリカ]Ⅰ〜Ⅳ(各半期2単位、合計8単位)、他
3・4年次
人文科学研究会[アメリカ文化研究](各半期2単位、合計8単位)、他+卒業研究 → 合計16単位以上

自然科学「副専攻」認定の一例:生物学

1・2年次
実験科目(必修):生物学Ⅰ・Ⅱ(各半期3単位、合計6単位)。
自然科学科目:心理学Ⅰ・Ⅱ(Ⅰ 各半期2単位、合計4単位)、自然科学総合講座(Ⅰ 半期2単位)、他
3・4年次
自然科学研究会Ⅲ・Ⅳ[生物学](各半期2単位、合計4単位)、他+卒業研究 → 合計16単位以上

副専攻認定制度では、既存の学問分野にとらわれない「知」のフィールドを新たに開拓することも奨励しています。上に挙げたモデルにとらわれる必要はなく、例えば人文科学と自然科学の2つの研究会を履修して、人文・自然の両分野にまたがる論文を書くことも可能です。

人文科学研究会

アメリカの文化と社会

奥田暁代(おくだ あきよ)先生

奥田暁代(おくだ あきよ)先生

おもに人種とエスニシティに関わる問題を取りあげながら、アメリカという国家のあり方について考察しています。差別や暴力など研究会で扱うテーマは深刻ですが、論文は学生各自が決めたトピックで執筆するので、メガチャーチやディズニー映画、LGBT 友愛会についてなど、さまざまです。副専攻では興味を持った領域を体系的に学べるばかりでなく、政治や法律の知識を活かしながら横断的に考えることもできます。大統領選挙の2016年は、アメリカの政治をマイノリティの視点から追いました。


学生から>
●少人数でアットホームな雰囲気がこの研究会の一番の特色です。先生と学生の距離が近く、どんな小さな気づきや疑問でも共有できます。加えて、学生のバックグラウンドも多様なため、より多角的な考察をすることができます。学生の本分である学びを手に入れることができる有意義な場です。(4年)
●普段の研究会では、人種問題やアメリカ大統領選挙といった時事問題に限らず、映画・ミュージカル等を素材に、アメリカ社会が抱えている問題を読み解けるのは、人文科学研究会ならではの魅力です。(4年)
●前期は文献を読みながら発表・ディスカッションを通して学びを深め、夏には合宿を行い、映画を観たりして親睦を深めました。後期は各ゼミ生が興味のあるテーマを選び、論文執筆に取り組みます。論文を書く際も、ゼミ全体で意見を交換するため、新たな発見があります。(3年)

ラテンアメリカ研究

本谷裕子(ほんや・ゆうこ)先生

本谷裕子(ほんや・ゆうこ)先生

私が担当する副専攻の「人文科学研究会」には、ラテンアメリカの文化や社会の織りなす豊かさや多様性に魅せられた面々が集い、文献研究という机上の学びはもちろんのこと、時には教室を離れ、日本社会に根付くラテンアメリカ文化の実態を知るフィールドワークに出かけています。副専攻では、特定の国や地域の研究が1年生時から体系的に履修できるようになっていますが、スペイン語・ポルトガル語圏の社会や文化を扱うコースでは、知的好奇心とバイタリティあふれる面々が、自身の学問的関心に応じて三人の先生の「人文科学研究会」の授業を横断し、学びの場を自由に共有しています。これは、異文化の混淆が織りなすスペイン語・ポルトガル語圏を扱う副専攻の授業が数多くそろう慶應義塾大学法学部ならではの学びの魅力です。
2015年の私の「人文科学研究会」では、日本製品のラテンアメリカ市場進出をテーマに、異文化受容のメカニズムとその戦略、日本とラテンアメリカをつなぐNGO活動について学びました。それがきっかけとなり、11月の三田祭ではラテンアメリカ発の美味しい恩恵―チョコレート・キヌア・コーヒーを使った商品を販売し、全収益をグアテマラの子供たちへの教育支援をおこなうNGO団体「青い空の会」に寄付しました。
ラテンアメリカを知る、体験する、考えることで得られた豊かな学びを副専攻論文という新たな実りへと昇華させるべく、学生諸君はただいま奮闘中。柔軟な発想と大胆な行動力を持ち合わせる彼らのおかげで、私もまた、ラテンアメリカを知る・学ぶ喜びをかみしめています。

心とことばの認知科学

辻幸夫 (つじ・ゆきお)先生

辻幸夫 (つじ・ゆきお)先生

私たちは様々なことを考え、喜怒哀楽を感じます。しかし、それは主観的な経験であって、本当のところは他の人にはわかりません。私たちは、他の人も自分と同じように考え感じるはずであると、自分と他者を無意識に重ね合わせて想像しています。あるいは言動や行動の経験的知識に照らして推測し、直接・間接のコミュニケーションを介して、お互いに理解する努力をしています。それは個人と個人の間でも、グループ同士の間でも、国家間でも基本的には同じことです。
このゼミではヒトの「心、言語、行動」の相互関係と、それらがどのように社会や文化との相互作用をもっているのか、様々な問題を取りあげて考察します。色々な学部の学生が履修しますが、法学部出身で副専攻の認定を希望する 4年生は卒論を提出します。履修者の関心はさまざまで、マスコミと社会心理、広告やキャッチコピーの効果、認知と行動の相関など、心理と行動の問題に集中する場合もあれば、政治の言説や法言語学、方言、翻訳の可能性、言語とジェスチャーなど、言語行動に焦点を当てる学生もいます。
「心、言語、行動」という人間にとって根源的な問題について、認知科学的な立場から幅広く深く考察することで、自分自身や他者・社会をしっかりと観察する目を養うことに繋げられればと期待しています。

文化現象としての音楽―アメリカのポピュラー音楽研究

大和田俊之 (おおわだ・としゆき)先生

大和田俊之 (おおわだ・としゆき)先生

ブルース、カントリー、ジャズ、ロックンロール、ヒップホップ――私の人文科学研究会では、アメリカで誕生したポピュラー音楽を〈学術的〉な対象として研究しています。ロックンロールの誕生に音楽産業の変遷はどのように影響しているのか。ブルースやカントリー・ミュージックはアメリカ南部史にどのように位置づけられるのか。ヒップホップという音楽ジャンルは既存の著作権制度とどのような関係にあるのか――こうした問いを発することで、日常的に接しているポップ・ミュージックをひとつの〈文化現象〉としてみることができるのです。
本研究会では英語圏ですでに定着している「ポピュラー音楽研究」の学術論文を講読することで、アメリカ文化への理解を深めます。それはまた、学生たちが普段から使用している趣味(好き/嫌い)や価値判断(かっこ良い/かっこ悪い)にもとづく言葉とは別の、ある批評的距離をともなう分析対象として〈音楽〉を捉えることを意味します。最終的に4年生には各自設定した主題を掘り下げた論文を、3年生を中心に三田祭で配布する音楽同人誌を作成してもらいますが、ポピュラー音楽の分析を通じてアメリカの社会や歴史を考察すると同時に、〈文化〉と〈言葉〉をめぐる根源的な問いへと議論を進めたいと考えています。

〈映画史〉とは何か?―イギリス映画から世界へ

佐藤元状(さとう・もとのり)先生

佐藤元状(さとう・もとのり)先生

私の人文科学研究会では、イギリス映画の視聴と議論を切り口として、〈映画史〉とは何かという哲学的な問いを考察します。映画という視覚的・聴覚的なメディアを通じて、私たちは、ある特定の国や地域の文化を、学問的な知識としてだけではなく、人びとの感情と身体的な感覚を伴った、総合的な人間の経験として、理解することができます。だとすれば、私たちの映画の関心を、ある特定の時代と地域から解放し、古今東西へと広げていくことは、私たちを文字通り世界に開いていくことになるでしょう。
本研究会では、3年生と4年生を区別することなく、1年間一緒に授業を行います。春学期は、古今東西のさまざまな映画を見て、映画史への理解を深めるとともに、映画研究の基礎文献を輪読し、映画を論じるための方法論を学習します。秋学期は、各自のテーマを研究論文に仕上げることを目標に、プレゼンテーションを繰り返し、徹底的に議論を行います。それらのフィードバックを基に、研究論文の作成に取りかかりますが、その際にもグループ検討や添削の指導を行います。
グローバル化の時代にふさわしいグローバルな知識と関心を養い、各自の関心を研究論文にまで高めていきましょう。