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法律学科の一部のゼミを紹介します

法律学科のゼミ[一部]

田高 寛貴 研究会【民法】



売買、賃貸、損害賠償、結婚、相続、もっと身近な例でいえば電車に乗る、ホテルに宿泊する等々、我々の日常生活のあらゆる局面を対象とし、そこで生じる紛争を解決する手立てとして作られたのが、民法です。
紛争解決のために奮闘する民法の真の姿を知り、社会のいまを体感してもらうことをめざして、このゼミでは、さまざまな裁判事例を素材として全員で討論を行っています。
複雑に利害が絡み合う事件のスジを読み解き、背景事情を含め事の真相に迫る。対立する原告と被告それぞれの言い分、あるいは、同じ事件でも異なる各審級の判決など、裁判にあらわれた多様な主張や見解を分析しつつ、ゼミ生どうし意見をぶつけあう。
そうした主体的な学びから、物事を客観的、多角的に眺め、論理的に思考する「リーガルマインド」を体得してもらえたら、そして何より、合宿やスポーツ、コンパなど多彩なゼミ活動を通じて、よき友との出会いの場を提供できたら、と思っています。

柳 明昌 研究会【商法】



大学の研究会は「ゼミ」とよばれます。ゼミの語源はラテン語のseminarium〈苗床〉にあります。研究活動のフィールドはできるだけ広く豊かなものとなることを心がけています。
ゼミの活動は二本柱からなっています。まず、法律学の学修に必要な判例の読み方をマスターすることです。実社会における紛争について、少なくとも対立する二つの立場から分析することを通して、物事を多角的にみることができるようになります。もう一つの柱が、現代的なテーマに関する研究です。既存の法律学の枠組みにとらわれず、現代社会の直面する新しい課題に積極的にチャレンジしてほしいと考えるからです。
ここ数年は、ICO(暗号資産による資金調達)元年といわれた当時のゼミ生から提案された暗号資産の法規制のあり方に取り組んでいます。慶應の伝統とされる教師と学生がともに教え学び合う半学半教の精神のもと、共に成長できるエキサイティングな場となっています。
先行き不透明な現代において、前途有為な学生の多様で元気な芽が育つのがささやかな楽しみです。

金 美紗 研究会【民事訴訟法】



私たちのゼミでは、民事訴訟法を学んでいます。
民事訴訟は、私人間に財産上のトラブルなどが生じ、それを話し合いで解決することができない場合に利用されるものですが、民事訴訟制度がしっかりしたものでないと、様々な不都合が生じます。
たとえば、重要な証拠を提出する機会が与えられないことで、真実に反する不正な判決が下されるかもしれません。訴訟に時間がかかりすぎるという評判が立てば、訴訟を利用することに消極的な人が増え、その結果、トラブルが放置されることになるかもしれません。さらには、せっかく判決が出たのに、その結論に納得しない敗訴者が紛争を蒸し返す可能性さえあります。
こうした様々な不都合を回避し、公正かつスピーディーな方法による紛争解決ができるよう、民事訴訟制度には多くの工夫が凝らされています。
ゼミでは、教員と学生間のディスカッションを通じて、民事訴訟制度上の様々な工夫について理解を深めていきます。

駒村 圭吾 研究会【憲法】



私のゼミは憲法のゼミです。憲法学は、自由や平等、戦争放棄に天皇、果てには国家や世界秩序までを取り扱う、とても懐の深い学問分野です。ですので、学生が期待するものも、いきおい、多種多様になります。というわけで、ご覧のとおり、大人数のゼミになりました。憲法は、どうしても抽象的な議論になりがちです。そこで、このゼミでは「裁判例」を素材にして、原告・被告に分かれ、可能な限り日常の言語で議論をすることに努めています。議論も形式ばらず、談論風発・蜂の一刺し・抱腹絶倒を旨としています。裁判例に現れた生々しい事実を土台に、裁判官という高度の法律専門職の思考方法を追究しますので、高度な法律知識も必要ですが、同時に、各学生の世界観や人生観、手持ちのとっておき情報などを爆発させ、ケンカ一歩手前まで肉薄しつつも、終わった後は好敵手としてお互いを尊重し、お酒の一杯でも酌み交わす、そういう人のつながりを大切にしています。

杉田 貴洋 研究会【商法】



商法・会社法を研究対象としています。たとえば、①取締役の各別の報酬額決定を代表取締役に一任できるか、②特定の株主と対立した取締役がこれに対抗するような新株発行ができるか、というような問題は、それぞれ、①取締役の報酬は定款または株主総会決議で定めるとする会社法の規定、②新株発行は取締役会の判断で実施できるとする規定の解釈の問題になります。技術的で細かい問題のようですが、現実の社会では、実績あるワンマン社長の意向に他の取締役が逆らえないとか、経営方針をめぐって大株主と取締役が対立するといったかたちで問題となります。条文を解釈する際には、その条文がどのような理由でそうした規定となっているのか(立法趣旨)というところに遡って考えることになります。ゼミでは、商法・会社法分野のさまざまな論点・判例を取り上げて、担当者に報告してもらい、これに基づいて全員参加で議論し、一緒に考えていきます。

大濱 しのぶ 研究会【民事訴訟法】



世の中では、借金等のお金をめぐるトラブルをはじめ、財産に関する様々な紛争が起こります。また、近年、離婚や子どものことなど家族に関する紛争も増えています。こうした紛争を民事紛争といい、解決する方法にも様々なものがありますが、このうち最も基本となるのが民事訴訟です。これは、判決という厳格な形式の裁判によって、民事紛争を解決するもので、民事訴訟法は、民事訴訟に関する手続を定める法律です。民事訴訟の理想は、裁判が適正・公平・迅速そして経済的に行われることといわれており、民事訴訟法の研究でも、こうした視点が大切です。私たちのゼミでは、民事訴訟法を、特に判例を通して勉強します。他大学の民事訴訟法ゼミとの合同ゼミにも参加しており、昨年の合同ゼミには15大学17ゼミが集まりました。ゼミは一種の共同作業で、一生を通じた友人に出会える場でもあります。みなさんも、私たちと一緒に、民事訴訟法を勉強してみませんか。

太田 達也 研究会【刑事政策、被害者学】

太田 達也 研究会【刑事政策、被害者学】

「犯罪の少ない安全な社会」を創るにはどうしたらよいか。犯罪対策を法政策の観点から追究する学問が刑事政策学です。法学部で学ぶ法律学の99%は実定法の解釈を通じて法適用の在り方を学ぶ法解釈学であり、刑法学や刑事訴訟法学もその一つです。しかし、適正な手続に則って犯罪者に刑罰を科すだけで社会の安全が守られるわけではありません。そもそも如何なる刑罰制度を設け、どのような形で科すのがよいか、刑罰の執行過程でどのような教育や処遇を行えばよいのかを法制度の点から検討する必要があります。
当研究会では、刑務所や少年院を見学したりしながら、こうした刑事司法制度論の研究を行っています。また、今日、犯罪被害に遭った被害者の支援や刑事手続における法的地位の向上も刑事司法の重要な課題となっており、当研究会でも犯罪被害の実態や犯罪被害者への支援の在り方について研究を進めています。

吉村 典久 研究会【国際租税法】

吉村典久研究会【国際租税法】

世界経済のグローバル化により、世界を股にかけて活動する企業や個人が増えています。そのようなグローバル経済環境の下で、優れた企業や個人は、国際租税戦略を立て、税負担の最小化すなわち税引き後利益の最大化を図ることによって、富裕化あるいは成長を達成することに努めています。当研究会は、そのような国際租税戦略を立案し、生じうる国内的・国際的租税問題を適切に解決することができる民間の人材や複雑な租税回避行為にうまく対処することができる政策立案能力や立法能力を持った国家の人材を育成することを目標としています。具体的には、Double Irish with a Dutch SandwichやStepping Stone Strategyといった租税回避スキームを分析し、タックス・ヘイブン対策税制や移転価格税制の適用において生じる問題を模擬裁判形式で検討することによって問題解決能力を高めています。

薮本 将典 研究会【西洋法制史】

薮本将典研究会【西洋法制史】

法律の勉強というと、分厚い六法を片手に難解な法律問題に挑むというのが、一般的なイメージではないでしょうか。こうした現行法の適用と解釈を扱う、いわゆる「実定法学」とは別に、法律学には、そもそもの出発点となる「法とは何か」について考える、「基礎法学」という学問領域があります。「西洋法制史」は、わが国が法を近代化する際にモデルとしたヨーロッパ法の歴史を題材に、この「法とは何か」という根源的な問いについて考える「基礎法学」の一分野です。「社会あるところ法あり」という格言もある通り、法は社会の移り変わりと共に、そのありようを大きく変えて来ました。こうした法と歴史が織りなすダイナミズムを感じてみませんか。

小山 剛 研究会【憲法学】

小山剛研究会【憲法学】

私のゼミは、基本的人権を中心に、憲法学全般を研究しています。法律学においては、「理論」と「実践」は車の両輪です。3年次には表現の自由、生存権等の憲法上の権利について判例と学説の現状を詳細に分析する「報告」の回と、「差別的表現の規制」や「生活保護の制度後退」などの具体的事案について違憲・合憲の立場に分かれて議論する「討論」の回を組み合わせて、憲法的思考を身につけます。4年次には、議院内閣制、地方自治など統治を含めた総合演習を行うほか(春学期)、卒業研究に取り組みます(秋学期)。
学期中の勉強以外も活発です。春には新3年次生を迎えての新歓合宿、夏にはみっちり勉強となんらかの貴重な体験をする夏合宿、冬のOB・OG会など、盛りだくさんの内容です。1年たつと大人の顔に変わり、成長を実感させます。

岩谷 十郎 研究会【法制史】

岩谷十郎研究会【法制史】

日本人だから日本の法を知っていてあたりまえ。だから日本法の歴史よりももっと目新しいことを勉強したい、と思っている人も多いでしょう。極東アジアに位置する日本は、古来より中国や朝鮮半島を介して、そして19世紀後半からは西欧諸国を介して、様々な法制度を言語文化的起源の異なる国々から輸入してきました。そこには常に「外来」のものと「固有」のものとのせめぎ合いが生じ、日本法の性質を複雑なものとしてきた歴史があるのです。私の研究会では、最新の法的、社会的課題を素材としながら、その背後に歴史や思想、哲学、宗教といったいろいろな文化現象の絡み合いを発見し、活発に話し合っています。"複雑さ"はまた"豊かさ"の源でもあります。それぞれに異なる意見に耳を傾けながら、新しい日本法のイメージを語り出す研究会なのです。

駒村 圭吾 研究会【憲法】

駒村圭吾研究会 【憲法】

私のゼミは憲法のゼミです。憲法学は、人権・平等・戦争放棄・天皇、果てには国家や世界秩序までを取り扱う、とても懐の深い学問分野です。ですので、学生が期待するものも、いきおい、多種多様になります。そういうこともあって、ご覧のとおり、私のゼミは人数がとても多くなりました。憲法は他の法分野と異なり、非常に抽象的で理念的な議論がどうしても多くなりがちです。また、たくさんの学生の多様な期待をひとつのゼミで満足させるのは困難。そこで、このゼミでは、自由や平等に関わる「裁判例」を素材にして、原告・被告に分かれて、可能な限り具体的な日常的言語で議論をすることに努めています。議論も形式ばったものではなく、談論風発・蜂の一刺し・抱腹絶倒を旨としています。

亀井 源太郎 研究会【刑法、刑事訴訟法】

亀井源太郎研究会 【刑法、刑事訴訟法】

本研究会は、刑法・刑事訴訟法を研究対象としています。刑法・刑事訴訟法は、いずれも、犯罪と刑罰に関する法律ですが、前者が、何が犯罪であるかを定めているのに対し、後者は、ある行為が犯罪に当たるか否か(さらに、犯罪に当たるとすればどのような刑罰を科すのがふさわしいのか)を決定するプロセスを規律する法律です。このように刑法・刑事訴訟法をともに対象とする研究会は珍しいものかもしれません。しかし、刑法上のある概念について、刑事訴訟における様々な問題を併せて考えて、はじめて、精密に理解できるという場合もあります。本研究会では、法律家を目指して勉強する学生については、刑法・刑事訴訟法の諸問題への理解を一層深めることを目指しています。また、民間企業等への就職を望む学生については、幅広い視野で物事を考える思考力と習慣を身につけることを目指しています。

前田 美千代 研究会【ラテンアメリカ法】

前田美千代研究会【ラテンアメリカ法】

本研究会のテーマは「ラテンアメリカ法」。数ある大学の法学部ゼミでも非常に珍しい異色のテーマを掲げています。法の成り立ちや運用は、条文解釈だけでなく、その国や地域の歴史や文化と深く関わっており、そうした地域文化の総合的理解の下で、その国の法を考察し、さらには比較法の視点から日本法を見つめ直そうというのが狙いです。ラテンアメリカ諸国も日本法と同様に西洋法を受け継いでいます。そのため両者は法体系が良く似ており、日吉で学んだ法律科目とスペイン語でも、条文を十分理解できるようになります。また、フィールドワークにも積極的に取り組み、日本に暮らす日系ブラジル人やペルー人の方々へのインタビューを通じて、日本での生活や就労、家族に関わる法律学の新領域を開拓したいと思っています。

佐藤 拓磨 研究会【刑法】

佐藤拓磨研究会【刑法】

刑法学は、「刑罰は何のために科すのか」、「犯罪の本質とは何か」、「どのような条件を満たせば犯罪は成立するのか」といった犯罪と刑罰に関する一般的な問題を論じる刑法総論と、殺人、窃盗、強盗、放火...といった個別の犯罪の成立要件を論じる刑法各論にわかれます。総論では抽象度の高い難解な議論が展開され、各論では条文の文言による制約と処罰の必要性のバランスという観点から、極めて精緻な解釈論が展開されます。刑法は1、2年次の講義で一通り学びますが、ゼミでは実際に裁判で争われた事例の研究や専門書の読解などを通じ、より一層の理解の深化をはかります。刑法は、司法試験以外には役に立たないと思われがちですが、抽象度の高い議論にも耐えうる論理的思考力や法的なバランス感覚を養うためには格好の学問だといえます。卒業生の進路も就職とロースクール進学が概ね半々です。

君嶋 祐子 研究会【知的財産法】

君嶋祐子研究会【知的財産法】

知的財産法は、著作物や発明のような人の知的創作活動の成果と、営業努力の成果が結実したブランドのような営業上の識別標識とを、財産として保護する法分野です。先進国病の日本においては、先端技術力、コンテンツの魅力によって世界市場で勝負するためにも重要な法分野です。当研究会では、主に特許法と著作権法について、ソクラテス方式により、裁判例の内容やそれについての自分の意見を発言します。夏合宿では、数人の班毎に事前に準備して研究報告し、全員参加で質疑応答を行います。4年生になると、自ら選択したテーマについて卒業論文を作成します。

フィリップ・オステン 研究会【国際刑事法】

フィリップ・オステン研究会【国際刑事法】

古くは東京裁判から新しきは国際刑事裁判所(ICC)まで、身近な問題では日本で轢き逃げや殺人を起こして母国に逃げ帰る外国人の犯罪まで、国際刑事法は、人の罪と罰とに関する法である刑事法を国際的な側面から考える比較的に新しい学問領域です。
日本ではゼミで国際刑事法を専門としているところは、今でも非常に少なく、実際には、2004年に発足したわがゼミが日本初の国際刑事法講座でした。当ゼミでは、これからのグローバル社会にも対応可能な素養を身につけるべく、教師と学生が一丸となって、この「未知の」領域を積極的に研究しています。

鈴木 千佳子 研究会【会社法】

鈴木千佳子研究会【会社法】

当研究会では、会社法という、会社の運営、資金調達、合併、企業買収などに関係する法律を研究しています。人数は3年生、4年生でそれぞれ20名前後ですが、そのなかはさらに少人数の班に分かれています。学生はその週に出された課題について、班で予習を行い、それを週1回の授業に場に持ち寄って、報告・質疑応答・討論を通じて理解を深めていきます。
人から与えられた知識を得るだけでなく、協力しながらわからないことも自ら積極的に学ぶ姿勢が身につけられるように指導します。飲み会、ゼミ合宿なども、ゼミ生が積極的に企画しています。一人一人の特徴を互いがよく知って、深く、長く付き合えるところが、ゼミの素晴らしさでしょう。

青木 淳一 研究会【行政法】

青木淳一研究会【行政法】

自動車やオートバイを運転するときは、都道府県の公安委員会が発行する免許が必要。電車やバスの運賃は国(国土交通大臣・地方運輸局長)が認可したもの――私たちの日常を取り巻く社会システムには、国や地方公共団体が深く関わっています。行政法は、そのような社会システムの存在理由、構造と機能を法律的な視点から議論し、行政と市民の関係を考えます。
私たちは、生活水準も、習慣や価値観も様々です。行政と市民の間の、不特定で多様な関係から最適解を導くためには、カギとなる問題を探し出す想像力と、現実を見極める、絶妙なバランス感覚を持つことが重要になるでしょう。これらの素質は、行政法を学ぶ中で研ぎ澄まされ、社会生活に活かされるのです。