博士課程院生研究紹介

三角ネットワークのなかの日韓関係:「朝鮮縁故」型・「反共親韓」型・「独自協調」型アクター間の交錯と代理
朴 敬珉

本研究テーマに関する発表

発表者氏名
(著者・講演者)
発表課題名
(著書名・論文名・演題)
発表学術誌名
(著書発行所・講演学会)
学術誌発行年月
(著書発行年月・講演年月)
朴 敬珉 戦後日本の対韓政策論理の起源:「朝鮮縁故」型の誕生と対韓請求権の原型 東京大学現代韓国研究センター・ワークショップ 2014年1月25日
PARK KYUNGMIN The birth of ‘Korea-Connection’ type in postwar Japan –Over the property outside of Japan Sciences Po Grenoble・Workshop(France) 2014年3月11日

研究成果実績の概要

 本研究では、戦後日本の対韓政策における「構図」の形成と、その構図が「三角ネットワーク」に変容する過程を、両国間の懸案が妥結される文脈と関連付けながら分析する。先行研究は、政府主導の対韓政策の分析か、民間の役割分析か、どちらかの片方に分析の枠が傾いている。また、分析対象に内包する対韓政策の「構図」と「三角ネットワーク」を看過していることから、本研究では、既存の分析枠組みの偏重と、内在する問題への視座の欠陥を補うこととする。
 上記の「構図」とは、「朝鮮縁故」型・「反共親韓」型・「独自協調」型の三類型で構成される。どの類型も、日本と朝鮮半島が、地理的・歴史的な経緯から、友好が両国の宿命であるとの認識を共有しながらも、三類型の根底をなす論理は、いずれも異なっていた。各論理は、朝鮮縁故の有無の軸と、反共の軸を基準に、韓国への接点を地縁学的、地冷学的、地思学的な側面から分類できる。「朝鮮縁故」型は、帝国日本の植民地朝鮮に縁故を置き、総督府官吏・事業者として有力者であった彼らが、終戦後日本に引揚げてから、政治的禁欲主義を見せつつ、文化的・経済的交流を目的とした集団の類型である。これらの集団が、朝鮮に関する知能と技術の新生を掲げた目的を全面に表出して、一九五二年一〇月に設立させたのが「中央日韓協会」である。彼らの朝鮮半島に対する認識には、基本的に朝鮮は元来ひとつであるが、冷戦と分断体制を現実としては受入れるものの、半島の将来像としては認めようとしなかったことから、反共イデオロギーには、一筋を引くものがあった。
 一方「反共親韓」型は、岸信介を代表とするいわゆる自民党内親韓派の集団が母体となる。特に一九五七年二月、岸信介政権の成立は、戦後日本の対韓政策「構図」において重要な分岐点を意味していた。岸信介自身、朝鮮との血縁的繋がりを強調しながら、久保田発言からなる日韓会談の中断期を挽回しようとした。しかし、彼らの政策論理の基底には「朝鮮縁故」型と異なる形で、反共防波堤として韓国を位置付け、経済論理で協力関係を構築していくための冷戦思考の利益追求があった。戦前の朝鮮半島において、政治的権力を持たない「反共親韓」型は、「朝鮮縁故」型が戦前に集積した政治的基盤を共有することによって、両国間の難局を打開するダイナミズムを生成させた。つまり、岸信介等親韓派の登場は、対韓政策の「構図」が「三角ネットワーク」に変容する過程において重要な意味をもつと同時に、この動力は、冷戦構造を背景に「日韓協力委員会」、「日韓議員連盟」といった政治的団体の設立に収斂されるのである。このように「朝鮮縁故」型と「反共親韓」型は、朝鮮縁故の有無と反共の両端に位置していた。
 これら二つの類型と異なる「独自協調」型には、陽明学者安岡正篤の思想的影響下に、朝鮮半島との友好を託された総督府官吏出身の八木信雄が代表的に該当する。彼は、朝鮮縁故を持ちながらも「中央日韓協会」とは別途のルートを築き、将来日韓の友好を目的に、民間の立場から、懸案の妥結に直接加担する類型である。この類型は、一九六五年日韓国交正常化以後、「日韓文化協会」を設立させ、政治的禁欲主義を見せつつも、戦前の政治的基盤を政府および自民党との間で共有して、懸案を妥結させる動力を有していた。このような三類型のアクター間において、政策資源の交錯と代理が行われ、懸案を妥結しつつ「三角ネットワーク」が定着して、そのなかで日韓関係は形成されていた。
 以上の三類型が、戦後日本の対韓政策「構図」を構成すると同時に、この類型化が、本研究の独創的な分析枠組みに値する。また、上述で触れた懸案とは、事例研究を意味し、冷戦の先鋭と緩和を背景に、終戦後引揚者の在外財産問題の浮上から、一四年間に及ぶ日韓会談、浦項総合製鉄所事業、金大中拉致事件、文世光事件、日韓大陸棚協定が該当する。こうして本研究が取り上げる問題は、戦後日本の対韓政策におけるアクターの類型化を目指し、日韓関係の複合性を理解するための全体的な構図を解明しようとする、研究課題の重要な一部をなすものである。

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