博士課程院生研究紹介

戦後日本の中間勢力による政策対立軸形成の模索
吉田 龍太郎

本研究テーマに関する発表

発表者氏名
(著者・講演者)
発表課題名
(著書名・論文名・演題)
発表学術誌名
(著書発行所・講演学会)
学術誌発行年月
(著書発行年月・講演年月)
吉田龍太郎
(単独、査読あり)
「政党再編と政策対立軸の模索―保守合同反対論とその後の日本政治―」 政治社会学会第4回総会及び研究会・自由論題セッション(於千里金蘭大学) 2013年11月17日
吉田龍太郎
(単著)
「ディーセントワークと男女の実質的平等へ向けて」 労働科学研究所『労働の科学』、第69巻第2号 2014年2月20日
Ryutaro Yoshida
(単独)
“Coexistence of socialization and neoliberalism ― A history of new political parties in Japan since 1950s ― ” Presentations des étudiants de la visite de l’université de Keio à Grenoble (於Institut d'Etudes Politiques de Grenoble) 2014年3月11日
吉田龍太郎
(単独、査読あり)
「保守合同後の芦田均―近代主義者の国家論とその帰結―」 法学政治学論究刊行会『法学政治学論究』第101号 2014年6月15日
(2014年3月4日掲載決定)

研究成果実績の概要

(1) 研究の目的
 本研究の目的は、昭和20年代から現在に至る日本政党史および言論史に見られる、いわゆる中間勢力による政策対立軸形成の模索と政党再編構想について、その実態と意義を論じることにある。これらの勢力は、保守―革新の対立において中間に位置しているとされ、大部分は1955年の保守合同により自由民主党に、一部は右派社会党を経て社会党に吸収されることになる。しかし、本研究においては、これらの過程を、保守合同やいわゆる55年体制の成立へ向けた単なる通過点としてとらえるのではなく、中間勢力が「進歩的保守政党」として打ち出した革新的あるいは社会的な理念とそれをめぐる運動を積極的に分析の対象とした。そして、先行研究においては言及の少ない保革の枠を超えた政党再編や連合政治の可能性についても検証を行ったものである。
 これらの成果は、これまで研究の蓄積が必ずしも多くない日本政治史上の傍流の政治運動の意義とその射程につき実証的な分析を提示すると共に、自由民主主義に対抗する政党再編が模索される現在にあって、その結集軸構築に際しての選択肢および留意点を示唆することが期待されるものである。

(2) 研究の内容
 本研究の対象になる中間勢力とは、具体的には、芦田均・重光葵らによる中道主義政党、三木武夫らの協同主義政党、農民組合による運動、右派社会主義の諸政党、鳩山一郎・石橋湛山らの分党派自由党、岸信介らの民族主義運動など、昭和20年代において古典的な自由主義を掲げる吉田茂政権に対抗した諸勢力を中心とする。また、55年体制成立後の保守あるいは中道の新党構想や民主社会主義政党など、現在に至る類似の政治運動も考察の対象とした。
 当該勢力の政策理念の分析に際しては、第一に、統治構造や議会政治の位置づけおよび経済・社会政策や外交政策をめぐる対立に、第二に、憲法観や国家と国民の関係さらには政治文化における保革対立に焦点を当てた分析枠組みを用いた。その際、第一の点については、政治改革・修正資本主義・アジア重視の外交という政策パッケージが中間勢力の間で広く共有されていた一方で、その射程をめぐる論争に政治資源を費やす必要が絶えず生じていたことを示した。また、第二の点については、与党である吉田自由党に対する批判としての有効性を発揮した一方で、党内における保革対立の火種となった側面が強いことを示した。その上で、政治理念をめぐる上記の対立構造は、自由民主党の非主流派や、のちの各時代の新党においても、内部分裂の要因となっていくことを明らかにした。
 以上の諸点につき、政党政治家とその周辺による一次資料(本人並びに周辺人物に関する個人文書、および団体の史料)、また各種二次資料(メディア、評伝等)を利用し、その言論、行動の両面につき政治史的分析を行った。

(3) 研究の具体的成果
 研究成果については、先記の学会発表・刊行物において発表された。
 11月の政治社会学会における報告「政党再編と政策対立軸の模索」においては、五五年体制成立期における政党再編論と、その後の新党構想の系譜をたどり、自民党(それ以前は吉田自由党)に対抗する形での二大政党を志向する中間勢力の陣営内では、資本主義の修正やアジア外交を提唱する議論と、政治における競争原理の意義を指摘しつつ経済における民間活力の導入を求める議論が併存し、緊張関係をはらんだ両者が行政改革や政治浄化を旗印に接合されていた旨を明らかにした。また、今後の野党再編においてもこの両者の関係構築の当否が鍵となる旨を示唆した。
 同発表後、自由民主党結成後から現在に至るまでの資料調査および理論的一般化を進めた。Institut d'Etudes Politiques de Grenobleにおける3月の発表はそれらの成果である。そして、同成果の一部は、「保守合同後の芦田均」として『法学政治学論究』第101号(2014年6月刊行予定)への掲載が決定された(2014年3月4日付)。
 また、平成期における経済社会のあり方をめぐる政治上の論争を女性学の成果と関連付けた竹信三恵子『家事労働ハラスメント―生きづらさの根にあるもの―』(岩波書店、2013年10月出版) につき書評論文「ディーセントワークと男女の実質的平等へ向けて」を発表した。同稿は、公益財団法人労働科学研究所発行の『労働の科学』誌2014年2月号に掲載された。そこでは、労働問題および男女共同参画運動の同時代史としての同書の意義につき論じた上で、政治的・政策的対処の必要性の強調や、産業化や生産性への言及につき指摘・評価した。一方で、生産性の論理の極大化である日本型の企業社会と、顧客獲得競争の論理に基づく市場化・グローバル化の相違点につき論じ、両者を一体とした著者の定義の再検証を提案した。
 さらに、後続の研究として発表予定の「保守合同後の政党政治と外交政策論争」は、日本法政学会において、2014年6月に予定される第120回研究大会における発表、および学会誌『法政論叢』第51巻第1号への掲載が3月理事会において決定した。

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